【O’s Note】捻挫にPEACE & LOVE

お知らせ
2026年1月は記録的な大雪に見舞われました。
例年になく手首の骨折(橈骨遠位端骨折),足首の捻挫が多くなっています。
まだまだ寒い日が続きます。転倒にはくれぐれもお気をつけて。
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下肢の捻挫、打撲、肉離れなどの軟部組織損傷には、これまで “ RICE ” の処置が取られてきました。
Rest (安静)、Ice (冷却)、Compression (圧迫)、Elevation (挙上)の頭文字をとった頭字語 (acronym)です。
「包帯を巻いて氷で冷やし、足を上げておとなしくしていなさい」ということ。
これは1978年に出版されたThe Sports Medicine Bookという本の中で述べられたスポーツ外傷の治療理論です。

ところが、この処置にはあまり医学的根拠がありませんでした。
ケガによる組織の “ 炎症 ” は体の正常な反応です。長期の安静、長時間アイシングは炎症の反応を妨げ,組織修復を遅らせるとわかりました。
理論を唱えたDr. Gabe Mirkinは自身のブログの中で、RICEを取り消す発言をしています。*1
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スポーツ外傷の分野ではなぜか頭字語がよく使われます。RICEの後に続いたのは、PRICEとPOLICEです。
PRICE:Protection (保護)、Rest (安静)、Ice (冷却)、Compression (圧迫)、Elevation (挙上) *2
POLICE:Protection (保護)、Optimal Loading (適度な負荷)、Ice (冷却)、Compression (圧迫)、Elevation (挙上) *3
POLICEでは安静が除かれ、疼痛に応じた適度な負荷が回復を早めるとされました。
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そして最近、 “ PEACE & LOVE ” が登場しました。*4
急性期は “ PEACE ”
Protection (保護)、Elevation (挙上)、Avoid anti-inflammation (抗炎症を避ける)、Compression (圧迫)、Education (教育)
回復期は “ LOVE ”
Load (負荷)、Optimism (楽観)、Vascularisation (有酸素運動)、Exercise (運動)

文献 *4より引用
PEACE & LOVEが従来と大きく異なるのは冷却を推奨しないことです。
“ A ” は Avoid anti-inflammation (抗炎症を避ける)。冷却や消炎鎮痛薬は炎症に抗する作用があるため避けるべきとされました。
また、急性期と回復期を分けて頭字語をつくったことも新しさを感じます。
( Eが3つもあって、無理矢理つくった感はありますが... )
私が支持したいのは PEACE & LOVE の “ O ” 、Optimism (楽観)です。論文の著者は破局的思考、抑うつ、恐れは回復を妨げると述べています。
「そのうち良くなるさ」と楽観的に考えられる人には良い結果が待っているはずです。
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外傷治療は RICE → PRICE → POLICE → PEACE & LOVEと変遷してきました。しかし、PEACE & LOVEもまだ科学的な臨床試験で有効性が確認されたわけではありません。
冷却の鎮痛作用は証明されており、上手に使えば有効です。ケガの重症度に応じて治療方針を決めるべきであることは言うまでもありません。
捻挫かなと思っても、長引く痛みがあるときは整形外科専門医の診察をお勧めします。
*1 Mirkin G ( 16 September 2015 ). Why Ice Delays Recovery. ( https://drmirkin.com )
*2 Bleakley CM, et al. The PRICE study ( Protection Rest Ice Compression Elevation ): design of a randomised controlled trial comparing standard versus cryokinetic ice applications in the management of acute ankle sprain. BMC Musculoskelet Disord 2007; 8: 125.
*3 Bleakley CM, et al. PRICE needs updating, should we call the POLICE? Br J Sports Med 2012; 46(4): 220-221
*4 Dubois B, Esculier JF. Soft-tissue injuries simply need PEACE and LOVE. Br J Sports Med 2020; 54(2): 72-73
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