骨粗しょう症とは、骨の中のカルシウム、タンパク質、リンの量が減少するために骨の密度が小さくなり、骨が非常にもろくなる状態をいいます。体の中ではたえず古い骨はこわされ、新しい骨が作られていますが、新しくできる骨よりこわされる骨の量の方が多くなると骨粗しょう症になります。
1.カルシウム摂取量不足
カルシウムは骨を作るのに大切な成分ですが、カルシウムは600mgが一日の所要量です。また骨粗しょう症予防の観点から一日800mgが望ましいともいわれています。この摂取量が少ないと骨粗しょう症になりやすくなります。
2.性ホルモンの分泌低下
骨粗しょう症は女性に多い疾患です。これは閉経後、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌低下が原因とされています。エストロゲンには骨を溶かすホルモン(副甲状腺ホルモン)の働きを抑える働きがあります。閉経後の女性ではエストロゲンの分泌が低下するため、これらのホルモンのバランスが崩れ全体の骨の量は減少し骨粗しょう症が起こります。また、カルチトニンというホルモンにもエストロゲン同様副甲状腺ホルモンの働きを抑える作用があるので、これらのホルモンのバランスが崩れても骨粗しょう症が起こります。
3.ビタミンDの不足
ビタミンDは肝臓と腎臓で活性型ビタミンDとなって、腸からのカルシウム吸収をよくする働きがあります。したがってビタミンDが不足したり、活性化ビタミンDがうまく作れないと腸から吸収されるカルシウム量が減少し、骨をつくる働きが弱まって骨粗しょう症が起こります。
骨粗しょう症になると骨がもろくなって、慢性の痛みや骨折が起こります。こうした症状がもっとも現れやすいのは背骨です。それは背骨が体重を支える支柱として大きな役割を果たしていて、外からの力が一番かかる骨だからです。もろくなった背骨は圧迫骨折を起こしやすく、一部がつぶれ、変形して、ねこ背になったりします。また、ちょっと転んだだけで手首の骨や下肢の付け根の骨(大腿骨頸部)が骨折しやすくなります。高齢者が背骨や大腿骨頸部の骨折を起こすと寝たきりになる場合が多くなります。骨粗しょう症による骨折は脳卒中についで2番目に多い寝たきりの原因になっています。
検査にはレントゲン検査、骨密度測定検査、血液検査などがあります。レントゲン検査は骨陰影濃度から骨密度を測定します。骨密度測定検査は骨塩定量装置で直接骨密度を測定します。測定部位は装置によって異なりますが手首の骨、腰椎、踵の骨が主な測定部位です。血液検査は他の骨代謝疾患との鑑別に用いられます。
1.食事療法
骨粗しょう症を予防するには、カルシウム、タンパク質、ビタミンDを多く含んだ食事を採ることが必要です。以下の表にこれらを多く含む食品を挙げます。
(カルシウム) | ・牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品 ・煮干、たたみいわし、海老などの小魚類 ・のり、ワカメなどの海藻類 ・豆腐、納豆などの大豆製品 |
(タンパク質) | ・卵類、魚類、肉 ・乳製品、大豆製品 |
(ビタミンD) | ・シイタケ、エノキ茸 ・さば、マグロ、カツオなど背の青い魚 |
2.運動療法
食事でカルシウムをたくさん取っても、それを骨に沈着させるには骨に対する負荷・運動が必要です。骨に圧迫力が加わると骨にはカルシウムを呼びよせる電気が発生します。骨のカルシウムを減らさずに、丈夫に保つには毎日合計8000歩歩く運動量が必要です。
3.薬物療法
食事や運動だけでなく薬の力も使って骨粗しょう症を予防していきます。骨粗しょう症の治療薬は、骨量の減少の抑制、骨量の増加、骨折の予防を目的に使用します。治療薬は1週間2週間で内服効果が現れるものはありません。半年毎に骨量を調べながら薬の内服を続ける必要があります。
(腸管からのカルシウム吸収を促進する薬) | ・活性型ビタミンD製剤 |
(骨形成を促進する薬) | ・活性型ビタミンD製剤 ・ビタミンK製剤 |
(骨の溶解を抑制する薬) | ・活性型ビタミンD製剤 ・エストロゲン製剤 ・イプリフラボン製剤 ・ビスホスホネート製剤 ・カルシトニン製剤 |